関西での滞在は先ず大阪。
大阪・梅田駅の近くのホテルでとりあえず2週間の予約を入れていた。
緊急事態宣言が解除されたばかりで、まだ時短の制限は残っているというタイミング。
チェックインの時点でなんだか様子がおかしい。
ホテルのスタッフ全員にガン見されている気がした。
日本入国はその3週間前で、東京のホテルで隔離を済ませていた事はこのホテルからのチェックが入った際、既に確認済みだった。
「この度は2週間の長期滞在のご予約、誠にありがとうございます。誠に勝手ではございますが、2ランク上のお部屋にアップグレードさせていただきました。」
予約していたのはキングサイズベッドのスタンダードの部屋だった。随分前の事、日本へ出張する事も多かった時期にこのホテルの系列のメンバーになっていた。メンバー向けのちょっとした割引と、会社の内部サイトを使って予約する事で得られる割引で、まぁ納得が行くレートだった。
2ランク上?どんな部屋だ?
案内されて驚いた。セミスイート。3人掛けのソファ、アームチェア、コーヒーテーブル、だだっ広いスペース、デスクとTV、ちょっとしたスペース、そしてベッド。二人用の洗面場、バカでかい円形の風呂とシャワー、スモークガラスで囲んだトイレ。スライドドアで仕切られたクローゼット。天井がやたら高いのでさらに広く感じる。しかも角部屋。
あのでかい風呂にお湯を溜めるにはかなり時間がかかるのだろう、と余裕こいていたら湯と水両方を全開にしたら僅か3分ちょっとで溢れそうになった。さすが…
バイキングスタイルの朝食付き。ジム、サウナ、ジャクジー、コールドディップ(水風呂)、シャワー、化粧台、ロッカーが揃っているスパも無料で使える。
後にホテルのサイトで調べたら、あの部屋は一泊10万円だった。
マジっすか?!
大阪・梅田駅の方向に夜景が広がる。
外向きの壁は全てガラス張りであるため、窓際に立つと真下が見える。
まぁ仕事もまだしなくてはならないし、日本の環境にもまだ慣れたとは言えない。母と頻繁に会って一緒に時間を過ごす事も多くなる。だから仕事に集中出来て、どこへ行くにも便利で、休むべき時には心身共に休める環境のようだからこれを最大限に利用しよう。
反面、貧乏性のことだ、一応予約した部屋のレートのままで良いのか、確認はした。
「もちろんでございます、T様。」
ダメもとで尋ねてみた。
「今の予約は2週間なんですが、さらに2週間、今の部屋と今のレートのままで予約を延長することは可能でしょうか?」
「もちろんでございます、T様。」
即決である。
チェックインした翌朝、朝食へ向かうと、「おはようございます、T様!」と来た。どうやらスタッフの間では名前も顔も既に知られている様子。朝食の最中も宿泊係のマネージャーとレストラン係のマネージャーが名刺を携えて挨拶に来た。
なんだなんだ、これは。
オレはただの、ふつーの宿泊客だよ。
スーツや洒落た服なんて一着も持って来てはいない、ごくふつーの。
しかし、理由は朝食の様子で察する事が出来た。自分以外の客はどこかの官庁か企業のお偉いさんっぽい日本人のおっさんが一人ずつ朝ご飯を食べていて、自分を入れて僅か3名だった。このご時世ではハイエンドな出張も無く、日本人観光客も希少で、あの極まりなくウザいインバウンドとやらは気持ち良い事に一人たりとも居ない。
こんな時に2週間の滞在をするバカなどその時はほぼ存在しなかったのだ。
道理で…
その2日後、同じく朝食中にイタリア系の男性が挨拶に来た。英語で会話を交わす。受け取った名刺を見ると「総支配人」とある。そんな人まで挨拶に来るのか。
確かにあの時点で観光産業は尋常ではない状況だったのだろう。
いやいや、これは「コロナの影響で」とか「コロナのせいで」とか言ってる場合ではないぞ。これは明らかに「コロナの恩恵」ではないか。
出かける時は「いってらっしゃいませ、T様」。
戻ってくると「おかえりなさいませ、T様」。
朝食でコーヒーを持ってきてくれる若い女性スタッフも「おはようございます、T様。今日はどんなご予定でございますか?」とにこやかだ。
どこか監視されているような気がして肩身が狭いところもあるのだが。
ま、良いっか。
VIPやん。ええやん。
えらいタイミングで来たものだ。
それならば… 今回の関西での滞在、とことん堪能させていただく!
Fujifilm X-Pro3、XF 23mm f/2 R WR