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写真・カメラとのお付き合い

日本 2021年秋 1 日本入国と隔離期間

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2019年11月以来、ほぼ2年経ってようやく日本へ帰省した。

 

日程はリモートワーク5週間、休暇3週間、サンクスギビングのホリデー週の9週間。

長期滞在だ。

 

9月20日にサンフランシスコ空港から成田へ向かった…

いや、その前に書き残したい事がある。

国際便搭乗と日本入国に向けて用意しなければならなかった事があった。

 

日本入国を目的とする渡航のための陰性証明書。これを入手するためには3つの条件を満たさなければならない。日本の厚労省によって義務付けられているものだ。

  • 離陸72時間以内前にPCR検査を受ける
  • 英語で出てくる陰性証明書を和訳する
  • 和訳した陰性証明書を「厚労省指定の用紙」に英語と共に記入する

非常に面倒である。頭が良くて勉強もよく出来たはずの官僚たちは英語が読めないようだ。

 

これを全て1箇所で片付けようとすると、日本人の医者が居るクリニックに行かなければならず、この工程を1時間以内に終えてくれたのは有り難かったが、それには350ドル払わされた。

 

さらに成田空港から都内の宿泊所までの足はタクシーを含む公共交通機関が使えないため、海外からの渡航者専用のハイヤーを調達しなければならない。日本政府のお偉いさんのお友達であろうと思われるその筋のハイヤー業者で米国を出発する前にその予約をしておく必要があった。結局、成田から西新宿の京王プラザホテルまでの移動には2万8千円かかった。

 

それと、成田空港で書類チェックだの、PCR検査だの、検査結果待ちだのと時間を費やしている間、やたら暑いためにマスクの内側は汗まみれになった。アメリカでは布製マスクをしていたのだが、あの日本の暑さと湿気の中では到底ずっと着けていられる代物ではない。代わりに機内でもらった使い捨てのマスクを着けたら少々楽にはなった。

 

日本の皆さんはほぼ一日中マスクを着けてふた夏お過ごしになったのだ、とあの時、遅まきながら気づいた。驚異的である。真面目さと言い、従順性と言い、とにかく信じ難い忍耐強さだと思う。

 

14日間(15泊)分の隔離期間の宿泊ももちろん自腹である。京王プラザを選んだのはホテルの周囲一区画内におそらくなんでもあるだろうと考えたからだ。後日、これは大いに正解だった事が分かった。

 

ホテルでチェックインした際、海外から到着したばかりの渡航者なのかを尋ねられた。正直にそうだと答えると、予約していた広めのキングサイズベッドの部屋には案内出来ないと言う。京王プラザでは隔離者専用に2フロアー分の部屋を確保しており、「隔離者プラン」なるものにお世話になる事になった。

 

部屋はツインの狭い部屋で、おそらくはスタンダードレベルの部屋なのだろう。通常は部屋の清掃も毎日行うが、隔離者専用の部屋は4日に一度清掃する。そのため、つまり正常のフルサービスを提供しないという理由で、宿泊レートは一泊8,000円と割安。当初予約していた部屋のレートの約半分であった。

 

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隔離期間中は、厚労省が空港で日本に入国する渡航者に強制的にインストールさせるアプリを通じて毎日3回のチェックが入る。そのうち2回は単なるGPSによる位置確認で、あと1回は自撮り動画による本人確認と所在地確認である。

 

京王プラザホテルからも毎朝の検温結果を毎日朝10時までに報告してくれと言われた。速攻で検温器を購入。日本のコンビニは凄い。

 

クソしてる最中であろうがシャワーを浴びていようがチェックは来る。一度シャワー中に自撮り動画のチェックが入ったので、濡れた顔を見せてやった。よっぽど股間も見せてやろうかと思ったが、科学的根拠も何も無い、思いつきの14日間の隔離を強要する理不尽な連中にはそこまで自分を晒す必要も無いと思い直した。

 

「スタッフまたはAIがチェックいたします」とパンフに書いてあったが、「AI」の部分は全く信用しておらず、今もあれはハッタリだと思っている。

 

ちなみに、日本で騒いでいる「AI」や「SDGs」や「DX」など、宣伝文句などで使われているものはほぼ間違いなく体裁作りのハッタリに過ぎず、中身の無い代物だと考えている。日本の外の先進国では、これらは全て既に当たり前のものであって、特に騒ぐ必要も無い。「デジタル化」と並んで今さらやたら強調したがっている時点で、その各分野で既に世界から遅れている事を自ら宣伝しているようなものだし、世界標準レベルの内容が伴っているとは到底考えられない。非常に残念な事だ。

 

一日に3回入る所在地と本人認証チェックは、しかし、朝9時から夕方6時までの間にしか来ないということがすぐ分かったため、隔離中の一日の行動パターンはそれに準じたものとなった。つまり、朝9時前に一筋離れた最寄りのドトールで朝食を摂り(外出1)、ホテルに戻る道に点在するコンビニのどれかで弁当や水やその他必要なものを買い、その後は部屋から出ず6時まで仕事をし、その日のチェックが全て入ったと思われれば一筋離れたどこかで晩飯を食う(外出2)。出たついでにホテルの周りを何周か歩いて運動代わりにした。そうしないと腰も肩もガチガチ、ガタガタになってしまう。

 

隔離中はとにかく仕事をしていればいいのである。週末も「仕事してろよ」という話なのだが、気分転換は必要だ。持参したヨガマットの上でストレッチや軽ーい筋トレをしたり、持参した本を読んだり、ネトフリ・アマゾンプライム・AppleTV+のサブスクを無駄にする訳にはいかないから映画やドラマのビンジングをしたり、家族や友達と電話で話したりして過ごした。

 

それと、干ばつに悩み水不足に喘ぐカリフォルニアでは今年の春から節水を求められているため、4月あたりから一度も風呂に入っていなかった。9月20日、京王プラザにチェックインするまでは、である。一方、日本では雨の降り過ぎで野菜が育たず、値段が高騰していた。いやいや、水にはお困りではないでしょう、私がその余りある水を大量に使ってあげますよ。コンビニで入浴剤(のみならずステキなバスソルトまで売っているのが日本のコンビニの素晴らしさである)を買ってきて朝から晩まで一日3回、風呂三昧である。極楽、極楽。風呂の文化がある所はそれだけで素晴らしい。

 

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予想通り、京王プラザの周辺一区画以内には1ダースほどのコンビニあり、以前からよく行っているとても美味い手打ち蕎麦の店あり、定食屋あり、寿司屋あり、博多ラーメンあり、カレー、焼肉、ステーキあり。さらにもう一区画足を伸ばせば(隔離を終えるまでは行かなかったが)ヨドバシカメラまである。

 

しかし…到着した当初も、隔離を終えた日も、その後の東京で過ごした間も、コロナ禍ではこうなっていたんだと驚愕するほど新宿もその他の都内のスポットも人が少なかった。10月1日、緊急事態が時短付きで解除されてからもそれは大して変わらなかった。

 

インバウンドの連中、特にあのアジアの大国から大挙してやって来る連中が居ないだけで日本はなんて素晴らしい国なんだと再確認した。

 

14日間はさすがに長かったが、日本の素晴らしい食べ物の豊富さと風呂三昧のおかげでそれほどストレスが溜まることもなく、無事隔離期間を終えた。

 

京王プラザをチェックアウトして、さらに1週間東京に滞在する事になっていた。14日間、真面目に隔離してホテルからは一区画以上離れた所へは行かなかった。そのため、日本には来てはいたが仕事と映画・ドラマのビンジングと読書しかしていなかった訳で、やはり東京で自由な時間を持ちたかったからだ。

 

東京で滞在した3週間の間、オンラインでオーダーしたPCR検査キット(唾液)で3日に一度は自主的に検査していた。米国で毎週2回自宅でPCR検査(鼻腔)をしていた影響もあるが、隔離を終えたら東京から関西へ移動して高齢者の両親と会う事になっているのだ。高齢者施設への訪問も頻繁にするつもりだ。良い加減に済ませる事は出来ないだろう。

 

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京王プラザから歩いて行ける別のホテルに移動してその1週間を過ごした。久々に会った高校時代の同級生、音楽好き仲間、小学校の同級生は皆元気だった。コロナ禍ではどこに住んでいてもいろいろ苦労がある。

 

Fujifilmから新たに発売されたXF 33mm f/1.4 R WRのレンズもマップカメラさんで購入出来た。今回の帰省にはカメラはX-Pro3のみ、レンズはXF 16-80mm f/4 R OIS WRとXF 23mm f/2 R WRだけを持って来た。防塵防滴となった新しい33mm f/1.4が加わり、この旅にはこれらとiPhoneだけで十分だ。

 

それほど苦痛ではなかった14日間の隔離を終えて体験したのは、コロナによる被害や不都合や不便さではなく、「コロナの恩恵」だった。日本から米国へ戻る日までずっとその恩恵を受け続けた気が今もしている。

 

そして関西へ移動。

晴れて両親と妹、弟との再会だ。

 

 

2021年9月  東京、西新宿

Fujifilm X-Pro3、XF 16-80mm f/4 R OIS WR

 

コロナ禍のデンバー、ライブ会場

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前回は興奮気味の旅とライブレポートだった。

今回はコロナ禍でのライブ会場やデンバーの様子に触れてみよう。

 

先ず、ホテルや飲食店、商店のスタッフはマスクを着用している。

しかし、顧客や街を歩く人たちは全くマスクをしていない。

 

宿泊したホテル内では自室以外でマスク着用が義務付けられていた。

エレベーターは家族・友人同士ならば人数制限は無い。

ただし、知らない人と同乗する場合は4人までとされる。

エレベーターの中にも消毒液ディスペンサーが設置されていた。

 

ワクチン接種証明はどこでも提示要求はされなかった。

 

1万人の観衆が密になって集うライブ会場でも同じ。

しかしグッズや飲み物のスタンドの販売スタッフはマスク無し。

プレクシグラスの敷居も無し。

違っている点と言えば、会場内でキャッシュは受け付けていなかった事と。

至る所に消毒液スタンドが設置されていた事。

 

消毒液スタンドは観衆の大半が大いに活用していた。

トイレでは手洗いに費やす時間が以前より長くて。

入り口周辺の列がなかなか前に進まない。

一応、一般的には消毒と手洗いは意識的にやっているという印象だった。

日本の皆さんもご存知の通り、これは米国人の行動パターン変異だ。

 

バンドとは20年以上の付き合い。

通常、このバンドからは毎年1年間有効のALL ACCESSのパスを貰っている。

 

しかし今回は楽屋へのアクセスは無かった。

バンドとその直の家族、プロダクションスタッフ以外は締め出された形。

この状況では当然の処置だと思う。

 

しかし観客席に居る限りでは普段と全く変わりない。

ハグをする前に「ハグしてもいい?」と尋ね合う光景が見られた。

飲み物や食べ物をシェアするのもみんな止めていたようだし。

 

このバンドを観に来るファンには「ワクチン拒否派」は来ないだろうとも考える。

 

普段は天然クーラーが効いているような町に住んでいるけれど。

デンバーとその周辺は熱波の真っ只中だった。

2年間の籠り生活。

2年分の老い。

35度前後の湿度を伴う高温と日差し。

そしてデンバーは標高が高く、空気が薄いときている。

さらに西海岸各地で多発している火事から来る煙で大気質は最悪だった。

この一見清々しい青空でも大気質指数(Air Quality Index - AQI)は90を超えていた。

 

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こんな状態でも一度演奏が始まると自然に身体が動いてしまう。

レッドロックスの初日、前座も含めて4時間ほぼ立ちっぱなし、踊りっぱなし。

2日目の朝は身体中がガチガチで疲労も感じていた。

それでも2夜目も再度4時間立ちっぱなし、踊りっぱなし。

 

レッドロックスでの2夜を終えて日曜日は別の野外会場だった。

その3日目のコンサートは午後3時開始。

あまりの暑さと直射日光でヤバいなと感じた。

 

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会場に着いてから1時間後、自然が恵みの雲を贈ってくれた。

パラパラと夕立のお裾分けがちょっと降って。

頭上を雲が覆ってくれたお陰でなんとかサバイブ出来た。

 

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それでも62歳の老体にはキツいよな〜

 

この会場もレッドロックスとほぼ同じコロナ対策を行なっていた。

そもそも、この「3夜目のショー」はデンバー市内の屋内会場で予定されていた。

それを野外会場に変えたのもコロナ対策の一環。

デンバー市内では屋内のライブ会場は現在全て閉鎖されている。

 

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しかし、やはり「ワクチンへの過信」があるのだろうか?

風がある野外会場でも、観客側は見ていて心配になるほど「ふつー」なのだ。

 

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カリフォルニアに戻ってニュースを見れば感染者数が爆発していた。

米国全土でデルタ変異種が猛威を振るい始めている。

 

日本では東京オリンピックが開催されていた。

 

 

2021年7月 コロラド州デンバー、レヴィット・パヴィリオン

iPhone 12 Pro

 

デンバー遠征

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先週木曜日早朝、予約しておいた車でサンノゼ空港へ向かった。

ほぼ2年間の籠り生活を経て初めて州外へ旅立った。

 

猫の額のように小さな町の外は全て「密」に見え、感じられた。

 

離陸して2時間後、デンバー空港に着陸。

空港内は夏休みで移動する人で混雑していた。

 

ダウンタウンのホテルにチェックインして。

近くのレストランで遅い昼食を食べ。

可愛いスーパーで夕食のサラダ、水と飲み物などを買って。

夕方からはホテルの部屋に籠った。

 

どうも出かける気になれない…

 

結局翌日の午後まで朝食とランチ以外は部屋に居た。

 

そして夕方、重い腰を上げてウーバーでライブ会場へ向かう。

 

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レッドロックスはデンバーから16キロ西にある野外イベント会場である。

1920年代、世界恐慌下に雇用を促進するために企画された開発・建築プロジェクトだ。

 

「それほど給料は払えないが、少なくとも仕事が出来て家族を養える」。

そう謳ったこのプロジェクトはこの地域の人たちの当時の生活を支えた。

 

巨大な岩石が山の斜面に横たわっている。

それを穿って野外劇場を作ったのだ。

 

外観は圧巻だ。

広がる空、巨大な岩石とその壁、眼下に広がるデンバーの町。

それぞれの場所にエネルギーがあるとすれば。

この場所で感じるエネルギーはどっしりとした開放感とでも言うべきか。

 

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こんな場所で愛してやまないバンドの演奏を体験すると自然にトランス状態になってしまう。

 

2年間活動休止をしていたバンドが今回蘇った。

2年間待ち続けたファンが熱狂する。

 

プロのアーティストたちはその2年間を決して無駄にせず、怠惰に過ごすことはなかった。

2年間の成長、進化、イノベーションが明らかに音になっている。

本人たちも歓喜の心持ちで演奏していただろう。

その喜びは彼らの表情、動き、演奏に現れて余りある。

 

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前回のライブから2歳老いた自分は涙腺も締まりが無かった。

バンドがステージに上がると号泣。

演奏が始まるとさらに号泣。

 

だらしねぇな〜、ジイさんは。

 

こんな調子で2夜連続で乱舞した。

 

2021年7月 コロラド州、モリソン、レッドロックス野外劇場

iPhone 12 Pro

 

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